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文章力

研究は書くことの連続です。研究成果は,通常「論文」という形に収斂されます。また,学習の過程でレポートや小論文を書く必要が生じることも多いでしょう。研究生活を続けていく限り,書くことからは逃れられず,それゆえ,文章,特に論理的で明解な文章を書く能力が,研究の現場では必要不可欠であると言えるでしょう。

しかし,研究という営みが,先人の積んだ礎にさらに石を積み上げることである以上,「読む」ことや「理解する」こと,さらには「まとめる」ことも,自分の研究を「書く」前提として必要になります。さらに,学問の世界の文章にはそれなりのルールがあり,それを無視して文章を書くことはできません。また,そもそも自分の読むべきもの,調べるべきことが何であるかを明確にするためには,基本的なリサーチの能力も必要です。

ここではこれら一連の作業を,中心である「書く」ことに必要不可欠な能力,という位置づけで,「文章力」という言葉で代表させることにしました。

院試塾では「研究計画書作成指導」として,大学院進学時に提出が必要となる研究計画書の作成指導を行っています。また,この指導の結果合格した皆さんのコメントも掲載させていただいていますので,ぜひ参考にしてください。

学問的な文章を書くための基礎力を身につける通信講座「日本語アカデミックライティング」や,社会人が,現在の業務を分析しながら大学院での研究課題などを考え,研究生活の準備をするための講座「社会人のための大学院研究生活入門ゼミ」もご用意しております。あわせてご利用ください。

Table of Contents
研究計画書をどう書くか 研究題目の設定  
計画書の骨格作り  
参考文献  
テーマ探し  
どこまで具体的に書くか  
的確に書くということ  
読み手を想定する  
先行研究について  
理論的視点を持つ—再び先行研究について—  
持説の展開は最小限に  
「学習計画」のあり方  
日本語学術文書の基礎知識 「…」と『…』の使い分け  
知的生産にMicrosoft Wordを使いこなす Wordのアウトライン機能  
知的生産にPalmデバイスを使いこなす Palmデバイスとは  
まずは「メモ帳」から  

研究計画書をどう書くか

大学院進学を考える人が「文章力」といってまず思い浮かべるのが研究計画書でしょう。そこで,研究計画書を書くうえでの基本的な心構え,考え方について概観しておくことにしましょう。

研究題目の設定

研究題目とは,単に研究に名前をつけることではありません。かなり漠然とした題目を研究計画書などに書いているケースがあるようですが,これではいけません。題目設定にあたっては,研究対象と方法論の,少なくとも2つをしっかりとおさえておく必要があります。1つの典型例としては「○○の××的研究」というのを頭に置いておくとよいでしょう。もちろん,このとおりになる必要はありませんし,研究科や専攻によっても事情が違いますが,このような題目のとらえ方をしておくことが大切です。 具体的に題目を設定する前に,自分の研究分野の学術論文のタイトルに目を通しておくとよいでしょう(当然のことながら,丸写しは困りますが)。研究とは何か,がきちんとつかみ切れているかどうかを自分なりに確かめる方法としても有効でしょう。もちろん,すぐに論文執筆に取りかかることができるほど特定的な題目が設定できている必要はありませんが,大学院では定められた修業年限で一定の成果をあげることが要求されますから,全くの素人だというのも困りものです。少なくとも基本的な文献には目を通してあることと,入学後の研究を方向づけるだけの基礎理解があることがわかるような題目である必要があります。研究計画において,「何を」「どのように」はもっとも大切な要素です。研究計画書の作成に具体的に着手する前に,まずはこの点をはっきりさせておく必要がありますね。

計画書の骨格作り

研究計画書を前にして,何を書いたらよいか悩んでしまう人は多いでしょう。そんな人がおすすめするのが,「キーワード法」とでも呼ぶべきものです。まず第1段階として「ブレインストーミング」を行います。今までの研究,今興味を持っていることなどについて,なるべく発想を自由にするようにしてキーワードを書き出してみます。少しでも頭に浮かんだことをなるべく肯定的にとらえながら,「こんなこと書いても大丈夫かな」と思えるようなことまで羅列します。第2段階では,羅列したキーワードを並べ替えてグループを作ります。似たような内容・方向性のキーワードがひとまとまりになるように並べ替えてください。その時,ひとつだけぽつんと孤立しているキーワードがあると思います。こうしたキーワードに対処する方法は2つあります。1つは,そのキーワードに関連するキーワードをさらに出すこと。そしてもう1つは,そのキーワードをリストから外してしまうことです。できる限り出てきたキーワードは活かす方向で考えるのがよいのですが,あまりに他の項目と関係の希薄なキーワードは,最終的には削除していくことになるでしょう。そして第3段階では,そのキーワードのグループを文章にしていきます。まずはキーワードを組み合わせて見出しを作成し,その見出しに対応する本文を作成していくとよいでしょう。この方法で計画書を書く場合に注意しなければならないのは,文章としてのまとまりがつかなくなりがちだ,ということです。必ず全体を読み返し,細部の調整をしていくことが大切です。

参考文献

研究計画書を書くうえで案外見逃されやすいのが,参考文献の重要性です。学術文書で大切なことの1つに,自分の考えと他人の意見をしっかり区別することがありますが,このために参考文献はぜひ必要なものです。また,研究計画を立てるうえで,理論的なバックボーンに言及することも必要になってきますが,このような場合にも参考文献への言及は必要不可欠であると言えます。

たとえば,皆さんが書いた卒業論文,ないしはそれに類するゼミ論文・レポート・研究報告などを思い返してみてください。研究を方向づけるうえで大きな影響を受けた研究論文や著作があるはずです。そしてそれらについては,参考文献として論文中で言及したはずですね。研究計画書においても同じです。今後の研究計画を考えるとき,出発点となる研究,対称軸となる理論,あるいは基本となる考え方などがあるはずです。これらについては,研究計画書の中で必ず言及しておきましょう。それが,学問の世界での「掟」なのです。計画書の内容はもちろんですが,これらの部分がしっかりしている計画書は,それだけでも書いた人の学問的な成熟度がにじみ出ている,と言ってもよいでしょう。

また,参考文献の挙げ方については各学問分野で若干違う部分もありますので,専門雑誌の論文や専門書の記述法を確認しておくとよいでしょう。とくに,学界で有力な論文誌の投稿規定などに従うのも1つの方法です。

テーマ探し

研究計画を立てる際に,テーマ探しで苦労しているという話をよく耳にします。テーマ探しで苦労する人の多くは,あまりに壮大な研究計画を立てようとして行き詰まってしまっているように感じます。研究計画とは,なにもよそ行きの特別なものではありません。大学院での研究生活の1日1日を方向づけるための「指針」のようなものです。

大学院に入って2年間で,いろいろな研究を手がけることになるでしょう。それはバラバラであっては困るわけで,修士論文(またはそれに代わる研究)という形に修練していくものでなければなりません。つまり,修士論文にいたる過程は,いくつかの小規模な研究に分類されると考えるわけです。そこでまずは,この小規模な研究について考えてみるとよいでしょう。

たとえば,学部卒業の際に卒業論文ないしはそれに代わる論文を執筆しており,それにつながる研究を考えている人なら,そこから出発していくのもひとつの方法です。論文執筆の際に用いた参考文献などから,さらなる発展の方向性を考えてみるとよいでしょう。この際,少し研究の対象を広げてみるとよいでしょう。学部の卒業論文の場合には,取り組みやすい,つまり比較的対象の限定されたテーマに取り組んでいることが多いと思いますが,修士論文ではもう少し大きなスケールの研究に取り組むことになるでしょう。たとえば,卒業論文では事例研究に取り組んだ場合,修士論文ではそれを理論・体系につなげていく,ということが考えられます。

具体的に言うと,たとえば自分が取り組んだ事例研究の成果が,原稿の理論・体系の修正につながらないか,ということを考えてみるとよいでしょう。また,それが既存の枠組みでは説明がつかない,ということになれば,かなり大がかりな研究になりますね。この見極めには,ある程度理論を知っていることが必要になります。また,事例から理論を見渡す「視点」も必要です。これが持てるようになれば,もうテーマは決まったも同然と考えてよいでしょう。

どこまで具体的に書くか

 院試塾の研究計画書作成指導に寄せられる計画書に多く見受けられる問題点として「具体性の欠如」が挙げられます。研究計画には,ある程度の具体性が必要です。というのも,研究計画書は単に研究計画を述べるだけではなく,計画の実行可能性についてプレゼンテーションを行う場でもあるからです。いくらすばらしい計画を立てても,それが実行できなければしかたがありません。

ここで必要となる具体性とは,たとえば何らかの資料を収集する必要がある場合,その資料をどのように集めるか,といったようなことです。「〜についての資料を収集し」とだけ書くのではなく,「〜についての…な資料を○○から/によって収集する」と書くわけです。また,目的と手段・方法の関係を明らかにすることも大切です。特定の目的があってはじめて,ある方法が選択できるわけです。自分の頭の中では当たり前のこととしてつながっていることでも,はっきりと書いて示すことが重要です。

具体的に書こうとする姿勢は,さまざまなところによい影響を及ぼします。まず,これによって研究計画がより練られたものになる,という点が挙げられます。自分自身の頭の中でも,より具体的に考えようとする思考回路が形成され,その思考回路は記述のしかた全体ににじみ出てくるものです。また,具体的であればそれだけ,研究計画がしっかりしたものであるという印象を与えます。上で述べた実行可能性についても,具体的なものが定まっていると思われる分,研究がうまくいきそうだという感触を読み手に与えるのです。

研究計画書は,いわば自分を大学院に売り込むためのものです。つまり,説得力のあるものでなければなりません。そのためには,抽象的な議論だけでなく具体的に話を進めることが大切です。できれば他人に読んでもらい,「ここはどういうこと?」「ここはどうするの?」と質問してもらうのもよいでしょう。

的確に書くということ

研究計画書の中には,かなり詳細に書くべき項目を指定しているものがあります。このような研究計画書を書く場合にとにかく多く見受けられるのが,設問にきちんと答えていないものです。たとえば「本研究の意義を述べよ」という指示が出ているにもかかわらず,先行研究の不備を羅列しているような場合がこれに当たります。 たしかに,先行研究に不備があり,それがわかっているからこそ新しい研究を積み重ねるのであり,それは意義の一面ではあるかもしれません。しかし,意義の核心ではないはずです。

このような過ちを犯さないためには,設問に対する答えをまず1文で簡潔にまとめることです。今考えている例題で言うならば,「○○のメカニズムを明らかにする」など,研究の意義を簡潔に述べるわけです。そして,これに肉付けをする形でパラグラフを展開していきます。学術的な文書の一種である研究計画書ですから,トップダウンの段落展開,つまり,最初に主題を明確に述べ,それを支持する文を付け加えることで段落展開を作っていく手法をとるのもよいでしょう。

ここで悪い例として挙げたような計画書がまずいのは,単に文章としてだけではありません。設問にきちんと答えられないようだと,研究能力そのものまで疑われる可能性もあります。そのようなことになってしまってはどうしようもありませんね。

読み手を想定する

すべての文章を書くうえで言えることですが,必ず「読み手」を想定しなければなりません。自分のなかに架空の読み手を設定し,言いたいことがその読み手にきちんと伝わるかどうかを考えながら,書き進めていく必要があるわけです。

研究計画書の場合,第一に伝えるべきことは自分がどんな研究がしたいかです。研究内容を相手に伝えようとする際,相手にどの程度の前提知識があるかを見極めることが重要になります。読み手は大学院の教官ですから,初心者にもわかるようにかみ砕いて書く必要はありません。しかし,自分の研究内容を熟知している指導教官にしかわからないような書きかたでは困ります。

1つの指針として,学会発表のレベルを想定するとよいでしょう。学会発表ですから,当該分野の前提知識が全くない人を対象とするわけではありません。しかし,学会発表を聞きに来る人はかなりいろいろな人がいるわけですから,それなりに先行研究の概略を紹介したり,今までの自分の研究に言及したりといったことが必要になってきます。「これから大学院に入るのだから,学会発表などしたことない」という人も多いでしょう。そういう人は,一度学会発表を聴きに行くのがよいですね。あるいは,学会誌に掲載された学会発表の概要だけでも読むとよいでしょう。

また,学会発表の概要を読めば,参考文献の挙げかたや研究用の言葉遣いについても学ぶことができます。特に参考文献の挙げかたについては,学問分野ごとにある程度決まった約束事があるので,そういう点でも参考にするとよいでしょう。

先行研究について

ある大学の研究計画書の書式指定で,「今後読まなければならないと思っている本・論文のリスト」という項目があります。たとえばこのような課題が出たときに,きちんと対応できるでしょうか。この項目がきちんと書けるのであれば,たしかに研究計画はそれなりに固まっていると考えることができるでしょう。

「こんな研究がしたい」というだけであれば,大学院に進みたいと考えている人ならだれでも構想はあるでしょう。しかし,博士前期課程の場合2年間という短い時間で一定の成果をあげ,それを修士論文という形にまとめなければいけません。そのためには,問題意識がある程度はっきりしていることが必要となります。

また,大学院における研究では,一定のオリジナリティ,つまり当該学問分野に対して一定の貢献をすることが要求されます。そのためには,先行研究について調べておくことは必要不可欠です。「今後読まなければならないと思っている本・論文のリスト」が書けるくらいの準備ができていれば,先行研究はある程度おさえてあると言えるのではないでしょうか。もちろん,単に本や論文のリストが作れる,というだけでは不十分です。そこに挙がっている本が,本当に研究内容と関係があるかどうかが問われることは言うまでもありません。下手な本を挙げれば,それによって研究能力が疑われてしまう可能性も否定できません。

さてそれでは,この項目をきちんと書くためにはどうすればよいのでしょうか。まず,卒業研究を行った,学部卒業間もない人であれば,その時に残した問題を調べてみるとよいでしょう。学部卒業から時間の経っている人,卒業研究のテーマとは異なる研究を志している人が問題になるわけですが,そのような人はまず当該分野の入門書・概説書で,なるべく新しいものを読む必要があります。そこに挙げられている文献を読み,ある程度問題の方向性をはっきりさせておく必要があるでしょう。

理論的視点を持つ—再び先行研究について—

多くの研究計画書原稿に欠けているのが「理論的視点」です。「理論的」と言うと「自分には関係ない」と思うかもしれませんが,研究を行う以上,理論を全く考慮しないということはあり得ない,と言えるのではないでしょうか。事例研究も立派な研究ですが,この場合にも理論的視点は必要です。「理論的視点」とは,具体的に言うなら「研究を学問領域の中で位置づける」ためのものです。学問の場である大学院で研究を行う以上,学問領域の中に自分の研究をきちんと位置づける必要があります。およそ研究というのは,既存のものの不足を補うものでなければなりません。すでに言われていることに不備があるからそれを修正する,既存の理論にはない視点からものごとをとらえ直す,理論の検証のための事例研究を行う,など,理論と向き合う場合の視点はいくつもありますが,何らかの形で「理論」と向き合わなければならないのは,いかなる研究についても言えることでしょう。

それでは,このような姿勢が具体的に表れている研究とは,具体的にどのようなものでしょうか。最低条件として「先行研究についての言及がある」ということです。先行研究に言及すると言っても,その具体的方法は研究計画書の長さや研究の性質などによって変わってきますが,先行研究についての言及が一切なく,「自分はこういう研究がしたい」ということだけが述べられているものは,残念ながら「研究計画書」ではないと言ってしまってよいでしょう。

持説の展開は最小限に

研究計画書に関する「勘違い」の表れとして多く見られるのが,持説の展開です。研究計画書とは,自分が研究しようとする「テーマ」を示し,そのテーマを構成する,より具体的な「問題群」を設定し,その問題群を解明するために必要な「手続き」,つまりは調査・分析などの研究手法を述べるものです。この目的を見失い,単に持説を展開することに終始している,ないしは紙面の相当量を割いている,研究計画書「もどき」が多いのが現状です。さらにひどいものになると,大した根拠もなしに現状を嘆いたり,批判したりする場合もあります。

もちろん,テーマや問題群を設定するにあたって,現状分析が必要であることは言うまでもありません。しかし,研究計画書の主目的はあくまでこれらのテーマや問題群を設定し,研究の手続きを述べるものであって,現状分析の記述は,この主目的を達成するために必要最低限のものでなければならないのです。研究計画書は持論を展開するための場所ではない。このことを常に頭において計画書を書くように心がけてください。

こうした誤りの背景には,おそらく研究計画書を書く手順が間違っていることがあると考えられます。いきなり構想なしに書き始めると,頭の中にあることがそのまま文章化されてしまい,持論の展開になってしまうのではないでしょうか。まずは構想をきちんと考え,それにそって記述していくことが大切です。その際,「何を」「どのように」研究するのかをまず考えるようにするとよいでしょう。そして,「何を」「どのように」研究するかについて,必要最低限の背景説明を,できるだけ客観的に行うように心がけるわけです。

また,作成途中の原稿についても,「何を」「どのように」の記述がどのくらいあるかを,たとえば蛍光ペンで塗り分けてみる,といった方法も考えられます。こうすることによって,研究計画書において中心となるべき記述が,全体の中でどのくらいをしめているかがわかるはずです。

「学習計画」のあり方

研究計画書は基本的に「研究計画」を書くものであるというのは,これまでにも何度か述べてきました。しかし,最近は大学院が研究者養成だけでなく高度職業人の育成も目標として掲げるようになったこともあってか,計画書の様式指定で「学習計画」を述べるように指示される場合も出てきています。また,明示的に指示されなくても,具体的な研究方法があまり思いつかなかったり,大学と大学院で専攻分野を変える場合などに,研究の進め方が執筆時点ではっきりしなかったりする場合もありますね。

このような場合の「学習計画」はどのように書けばよいのでしょうか。まず,研究計画の中での学習計画である,という点を明確に意識する必要があります。つまり,単なる「お勉強」の計画,つまり,「この授業をとりたい」などというのは,たとえ「学習計画」を書くように,という指示があったとしても,研究計画書にはそぐわない,ということです。

研究計画の中に学習計画が位置づけられている以上,テーマの研究を進めるうえでの必要性から学習計画を考えていくべきでしょう。たとえば,このテーマを研究するにはかくかくしかじかの知識・理解が必要だと考えられ,それは「○○××論」の授業を受け,自分なりにも学習していきたい(できればもう少し具体的に,たとえば『○×△□』という本を読んで,といった具合にかけるとさらによいでしょう),といった展開になるわけです。必要に応じてこの分野を専門とされる○○先生にも指導を仰ぎたい,ということも(必須ではありませんが)書き加えるとよいでしょう。

大学院もだんだん変化しつつあり,「何でも自分で学ばなければならない」という雰囲気は消えつつあるところもあるようです。しかし,そうはいってもやはり,すべてを教えてもらうという受け身の姿勢が歓迎されるわけではないし,これは大学院として望ましい姿でもありません。この点をふまえ,自分なりに必要なものは何か,それはなぜ必要かを常に見定めながら,「学習計画」を書いていく必要があると言えるでしょう。もちろんその際には,「今の自分に何が足りないか」も認識しておく必要があります。

参考図書
タイトル 研究計画書の考え方—大学院を目指す人のために
著者 妹尾堅一郎 出版社 ダイヤモンド社
説明 研究計画書に対する考え方を基本から解説してくれる本。研究計画書を書く上で陥りやすい誤りや,大学院での研究に対する考え方にもふれており,ぜひ読んでおきたい。後半の実例集も役に立つ。
タイトル 創造的論文の書き方
著者 伊丹敬之 出版社 有斐閣
説明 論文作成の参考書だが,学問的な研究の基本的な考え方を説いている点で,研究計画書作成にも役立つ。特に,テーマの設定や,理論と実際とのバランス感覚などについての記述が有用。

日本語学術文書の基礎知識

日本語で論文や研究計画書,その他学術文書を書く際の「作法」は,本来学部教育の中で十分に身についているはずのものですが,研究計画書の指導などを実際に行ってみると,こうした基礎知識が欠けている人も多いように見受けられます。ここではこうした基礎知識に解説を加えていきます。

「…」と『…』の使い分け

日本語で引用などの表記を行う場合,一般的に用いられるのが「…」(カギカッコ)です。また,類似のものとして『…』(二重カギカッコ)もありますが,この使い分けには一定のルールが存在します。しかし,実際に受講生の書いた研究計画書などを見ていると,きちんと使い分けができていないか,ある程度使い分けができていてもきちんと統一できていない場合が多いのです。

まずは基本ルールをおさえておきましょう。引用の際に基本的に用いるのは「…」のほうです。“…”(クォーテーション・マーク)を用いる人もいますが,日本語学術文書ではあまりなじまないので,基本的には用いないほうがよいでしょう(もちろん,引用元で用いられている場合は例外です)。カギカッコ内部にさらにカギカッコを用いる場合には,『…』を使用するわけです。この際,引用元の「…」は『…』に変更する必要が生じます。具体例で確認しましょう。

引用元の「論理」が,これを含む部分が引用され「…」の中に入るために『論理』となっているわけです。

「…」と引用との関連で問題となるのが,引用部最後の「。」(句点)です。これには大きく,そのままつけておくか外すかの2通りがあります。基本的にはどちらを使用しても問題ありませんが,文書内部で統一することが大切です。

また,参考文献表においては,本や論文集,雑誌そのもののタイトルは『…』,雑誌や論文集などに掲載された論文のタイトルは「…」で示すのが普通です。欧文文献の場合に,前者をイタリックで,後者を"..."で示すのが普通です。

知的生産にMicrosoft Wordを使いこなす

論文やレポート,企画書などを書く際,ワープロソフトを使う人はますます増えています。しかし,清書用としてしか用いていない人も多いのではないでしょうか。また,知的生産をサポートするさまざまな機能が用意されているのに,十分使いこなせていない人も多いと思います。

もちろん,主たる目的は知的生産であって,ワープロソフトの機能を使いこなすことではありません。しかし,ワープロソフトを使いこなすことによって,知的生産の各段階が効率化されるのはもちろん,結果として得られるアウトプットもより優れたものになるとしたら,どうでしょうか。

そこで本稿では,最近販売されている多くのパソコンにプリインストールされているMicrosoft Wordを用いて,知的な文章を書くための方法について考えていくことにしましょう。ここで紹介しているのはWord 2000ですが,他のバージョンでもほぼ同様の操作が可能です。

なお,院試塾では実習を含む通信講座「Microsoft Wordによる知的生産ゼミ」も開設しています。あわせてご利用ください。

Wordのアウトライン機能

Wordによる長文作成を行うには,アウトライン機能をマスターすることが必要不可欠です。アウトライン機能とは,文章の見出し構造を最初に作成し,それを肉付けしていく形で文章を執筆していくための機能です。これは,英語のoutlineが「概要」ないしは「要点」という意味であることからもわかるでしょう。アウトライン機能を用いて文書を作成するということは,つまりトップダウン,文書全体の構造の上から下へと作成していくことだと言えます。

それではまず,アウトライン機能がどのようなものか概観してみましょう。ここからは,お使いのパソコンで実際にWordを操作しながらお読みになることをおすすめします。このページを保存し,Wordで開いたら,[表示]メニューを開いてみてください。右の図は,[表示]メニューの上4つを示しています。通常Wordを使う場合,[下書き]または[印刷レイアウト]で文書を表示させていることが多いでしょう。

アウトライン機能を用いるには,このメニューで[アウトライン]を選択します。あるいは,画面左下のボタン(左図参照)を用いてもかまいません。この図で押し込まれた状態になっている,右から2番目のボタンが[アウトライン]のボタンです。

上記の操作でアウトライン表示に切り替えると,画面の見た目がずいぶん大きく変わります。たとえば,今ご覧になっている文書の構造の一部をアウトライン表示で示してみると以下のようになります。まず注目すべきは,それぞれの段落の先頭に記号が表示されている点です。この記号が示しているのは,それぞれの段落が全体の中でどのように位置づけられているか,ということです。たとえば+の記号は,その段落(見出し)に従属する項目があることを,小さい正方形はその段落が本文に該当することを,それぞれ示しています。

それぞれの見出しは「レベル」に分けられています。たとえば,「知的生産にMicrosoft Wordを使いこなす」はレベル1(最上位)に割り当てられており,「Wordのアウトライン機能」はレベル2となっています。下位の見出しは見出しは上位の見出しに従属します。また,本文はそれぞれ見出しに従属しています。レベル間の従属関係や,見出しと本文の主従関係はインデントで示され,上位のものほど左側に寄った形で表示されます。このような形で表示することによって,文書の基本構造が一目瞭然となるわけです。

アウトライン機能を用いて文書を作成した場合,さまざまな機能を利用することが可能になります。たとえば,Wordには目次を自動作成する機能がありますが,この機能はアウトラインレベルの情報を用いるため,それぞれの見出しが適切なアウトラインレベルに割り当てられている必要があります。また,見出しの書式を一括して変更し,それぞれの書式を見出しレベルと対応させて登録する「スタイル」機能も用意されていますが,この機能を使うには,やはりそれぞれの見出しがきちんとレベル付けされていなければなりません。さらに,章・節の番号を自動管理する機能を利用するためにも,アウトラインレベルの情報が必要となります。このように,アウトライン機能を用いて文書作成を行うことで,長文の作成に必要となる機能が利用できるようになるわけです。

見出しレベルの活用はWordだけにとどまりません。アウトライン機能を用いて文書を構造化してあれば,その構造は他のアプリケーションでも利用することができます。たとえば,Microsoft PowerPointにはWordのアウトライン構造をインポートする機能が用意されており,この機能を用いれば,発表用のスライドショーも比較的簡単に作成することができます。

しかし,知的生産に有効なのはこれだけではありません。アウトライン機能の最大の利点は,長い文書の構造を常に見直し,論理的な構成のしっかりした文書が書けるようになることです。たとえば,文書が長くなってくると,パソコンの画面で文書の構造を確認することは難しくなります。上下に何度もスクロールしなければならない場合も出てくるでしょう。しかし,アウトライン機能を用いて作成した文書であれば,表示させる見出しレベルを指定し,該当する見出しだけを抽出して表示することが可能になります。次の図をご覧ください。

この図では,今ご覧になっているHTMLファイルの全体構造が示されています。このファイルでは1〜3までのレベルの見出しがあります。上の図と比較してみましょう。上の図では,画面で確認できるのは文書全体のごく一部でしかなく,全体の構造を確認するには何度も上下にスクロールしなければなりません。しかし,右の図のように本文を一時的に隠すことによって,文書全体の構造がスクロールしなくても一覧できるようになるのです。これによって,常に見出しの構造(つまりは文書の論理構造)を確認しながら文書作成を進めることができるようになるわけです。

また,この表示状態で印刷を実行すると,表示されている見出しだけが印刷されます。この機能を利用すれば,見出しだけを抽出した発表用の資料も簡単に作成できます。たとえば論文の中間発表の資料作成や,指導教官から「目次案を持ってきなさい」という指示があったときになどに有効でしょう。

この表示内容について,もう少し詳しく見ていくことにしましょう。それぞれの見出しの下に灰色の線が表示されています。これは,その見出しに対して従属する内容(見出しまたは本文)が存在するが,ここには表示されていないことを示しています。これは見出しの先頭の記号が+であることからもわかります。作成途中の文書では,見出しに従属する内容がある場合とない場合とがあるわけですが,この表示によって,どの部分の執筆が進んでいるかといったことも確認できるわけです。

このような形で表示するためには,アウトライン表示に切り替えたときに表示される「アウトライン」ツールバーを使用します(右図参照)。この図では「3」のボタンがクリックされていますが,この状態が上で見た図に対応しています。「すべて」を表示すると,本文までの全体が表示されます。

このボタンで表示レベルを切り替えた場合,文書全体で同じレベルまでの見出しが表示されます。特定の見出しだけを選択し,それに従属する要素を表示させるには,「アウトライン」ツールバーの「+」(展開)/「-」(折りたたみ)のボタンを使います。たとえば,「研究計画書をどう書くか」に従属する要素は隠しておき,「知的生産にMicrosoft Wordを使いこなす」に従属する要素だけを表示したいという場合には,この見出しをクリックしてから「+」(展開)のボタンをクリックします。右の図のような表示がえられるはずです。

知的生産にPalmデバイスを使いこなす

知的生産においては「常に考え続けること」が重要です。しかし,パソコンは常に持ち歩くものでもないし,起動に時間がかかるなど,「ちょっとしたアイディアを蓄積する」ことには向かない部分もあります。このような欠点を補ってくれるものとして,Palm OSベースのハンドヘルドデバイスが考えられます。本稿では,知的生産にPalmデバイスがどのように活用できるかを考えてみることにしましょう。

Palmデバイスとは

まずは,ご存じない方のために,Palmデバイスとは何かについて,簡単に説明を加えておきましょう。Palmデバイスとは,Palm OSという,電子手帳用OSを搭載した携帯端末で,いわゆるPDA (Personal Digital Assistant)の一種です。基本機能は「予定表」「アドレス」「To Do」「メモ帳」などがあり,これらに加えてインターネット閲覧機能やメール機能のついたものが主流になっています。「ハンドヘルドデバイス」と呼ばれることもありますが,その名の通り手のひらに収まる程度の大きさになっています。

もちろん単体でも使うことができますが,「Hot Sync」と呼ばれる機能によって,パソコンと同期することができます。パソコン側にはPalm Desktopというアプリケーションをインストールし,これを用いてパソコンで情報を入力することもできるようになっています。Palm DesktopをインストールしたパソコンとPalmデバイスを,「クレードル」と呼ばれる接続機器や「Hot Syncケーブル」というケーブルで接続して同期を行います。つまり,外出先などでPalmデバイスに入力した内容を,帰宅してからパソコンに取り込み,それをパソコンで利用することもできるわけです。

Palmデバイスへの入力は,通常「スタイラス」と呼ばれるペン型の道具を使って行います。直接カナや漢字を入力するのではなく,Graffitiと呼ばれる特殊文字(右図参照)によってアルファベットなどを入力し,ローマ字変換を行います。このGraffitiによる入力を敬遠する向きもあるようですが,手書き文字認識のスピードなども考えると,Graffitiによる入力のほうが効率的だと言えるでしょう。どうしても手書き入力の機能を使いたい,という場合には,ジャストシステム発売の,日本語カナが直接入力できる『ATOK for Palm OS日本語グラフィティ対応版』を使うのもよいでしょう。

日本語Palm OSデバイスは複数発売されています。筆者が利用しているのはSONYCLIEです。Palmデバイスの価格は安いもので\10,000くらいから,高いもので\40,000くらいまであります。安いものだと画面表示がモノクロになりますが,PDAとしての基本機能を使ったり,知的生産に活用したりするというのであれば,モノクロ画面でも問題ないでしょう。

まずは「メモ帳」から

Palmデバイスを知的生産に活用する第一歩が,標準の「メモ帳」を使うことです。「メモ帳」はその名の通り簡単なメモをとるためのものです。1項目あたり4キロバイトまでしか書けないという制約はありますが,アイディアのメモとしては十分な分量でしょう。そもそも,Graffitiによる入力はキーボードに比べると遅いので,Palmデバイスで長文を書くのはつらいでしょう。

Palmアプリケーションの特徴として,項目を「カテゴリ」に分類して整理できる点が挙げられます(右図参照)。カテゴリは自由に増やすことができるので,必要に応じて分類項目を設けるとよいでしょう。たとえば,論文のテーマ毎にカテゴリを作るのも1つの方法です。右の図は筆者のCLIEのメモ帳のカテゴリですが,院試塾で発行しているメールマガジン「Daily English」のネタを入れるカテゴリ,この「考える生活」のネタを入れるカテゴリ,買うべき本に関するメモを入れるカテゴリなどを設定しています。メモを保存する際にカテゴリを指定できるほか,後からカテゴリを変更したりすることもできます。右図の状態からカテゴリを選択すると,そのカテゴリに属する項目だけが表示されます。

このカテゴリは言ってみれば,メモをそれぞれ別のボックスに入れてある状態に相当します。何かを思いついたり,ちょっとした情報を見かけたりしてメモをとり,それを分類する箱にパッと投げ入れるようすに対応させて考えるとよいでしょう。知的生産のためのメモは「必要なときにすぐ書けること」と「適宜分類できること」が必要ですが,Palmデバイスの「メモ帳」は,まさにこの条件にぴったり合うものと言ってよいでしょう。

こうしてとったメモは,Palmデバイスで参照・利用できるのはもちろんのこと,HotSync機能でパソコンに転送して利用することも可能です。すでに述べたとおり,Palmデバイスと連携をするためのアプリケーションであるPalm Desktopをパソコンにインストールしてあれば,HotSyncによってPalmデバイスに保存されている内容がパソコンでも利用できるようになります。もしパソコン側でこれらの内容に変更を加えた場合には,次回HotSync時にPalmデバイス側にもその変更が反映されます。

また,当然ながらPalm Desktopから他のパソコン用アプリケーションにはコピー&ペーストが利用できるので,Palmデバイスでとったメモの内容は,Palm Desktop経由で,Microsoft Wordなどでも利用できるわけです。

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